satoyamahanako’s blog

里山で炭を焼いて暮らしています。

キツネの王様

朝、家の前の通りに出たら、やけにカラスがうるさい。5~6羽がかたまって喧嘩腰に騒いでいる。いつものようにトンビとやりあってるのかな、今朝は早くから始めたもんだなと思ったら、そうではなかった。
キツネだった。
山中の集落へ入る道の上り口にキツネが1匹朝日を浴びで立っていた。その上でカラスがバタバタと羽を激しくばたつかせながら、ギャッギャ鳴き続けている。
キツネが里に下りて来るなんて珍しいなあ、なにか良い餌でもあったのかなあ、カラスと取り合いになってるのかなあと眺めていた。
それにしてもキツネの立ち姿の美しいことよ。あの特徴的な形の長い尻尾をまっすぐに伸ばし、カラスのことなど微塵も気にかけない風で悠然としているのだ。キツネのいるそこだけ時間の流れが違う。空間はおろか時間までキツネが支配しているみたいだ。
王様だなと思った。
いくらカラスが大騒ぎしようとも王様の耳には入らない。王様はカラスよりももっと広く世界を眺め、深い思索にふけっているのだ。

カラスにとってキツネは絶対にそこにいてもらっては困る存在らしく、「山に帰れ山に帰れ」と叫び続けている。
そのうちキツネも踵を返して山中の集落へ上がる道をゆっくり登り始めた。カラスもキツネについて移動する。「山に帰れ山に帰れ」
キツネもやっぱり山道より舗装道路のほうが歩きやすいのかなあと目で追っていたら、10メートルほど上がったところでヒョイと山の中に入って行った。
そしてカラスもおとなしくなった。