朝早く、まだ車通りも少ない時分、通りを歩いていると向こうから狸が歩いてきた。
それがちょうど夜勤明けでいっぱいひっかけたおっちゃんが歩いてくるみたいな感じだったのだ。心地よい疲れを感じながら、鼻歌でも歌っているような様子で、あっち見こっち見しながらの軽い足取りだ。
おっちゃん、今帰り?今日は遅いね。
おお、あんたかい。今から仕事か?今日は早いね。
うん。おっちゃん、お疲れ様。
はい、ありがとさん。あんたは頑張ってな。俺は今から寝るよ。
はーい。お休みなさーい。
そのタイミングで狸は右手の林に入って行った。
朝から狸に会うのは珍しい。しかも道の真ん中で。