satoyamahanako’s blog

里山で炭を焼いて暮らしています。

目をかける

まるっきりの初心者がどうやって炭焼きを覚えたかというと、ひとつはベテランさんの仕事のお手伝いと称して炭窯に寄せてもらって覚える。見学させてくださいとお願いすることもある。
そのほかに、炭焼きに限らず、いろんな人が炭窯に立ち寄って教えてくれることもあった。ある年齢以上の人の多くが、今は炭を焼いていなくても若いころに炭焼き経験があったり、親や親戚が炭を焼いていたりしたので、経験や知識がある。
わたしたちの仕事ぶりを見て、「あんた、そこはこういうふうにやるんだ」とか「道具の使い方がうまくなったね」とか「こういう炭が良い炭だ」とか、教えてくれたのだ。
また、家の前に止めてある軽トラに原木が積んであるのを見かけると、「これは良い木だね。良い炭が焼けるよ。良い山を買ったもんだね」と褒めてくれたり、「あそこに良い原木山があるよ」と教えてくれたりもした。
わたしたちが移住したころは、炭焼きについて知っている人が村中にまだたくさんいたので、わたしたちを見かけた誰彼が話しかけてくれて、それでずいぶんいろんな知識や知恵を授かった。昔話もたくさん聞いた。

だから、特定の師匠について学んだというよりは、村全体で育ててもらったという実感がある。炭窯にいても山にいても家にいても、誰かが必ずわたしたちを見て気にして声をかけてくれていたからだ。
人は眼差しで育つんだなと自分の体験を通じて知った。
目をかけるという言葉があるけれど、目をかけられているとよし頑張ろうと思えるものなのだ。