satoyamahanako’s blog

里山で炭を焼いて暮らしています。

炭切マニア その2

炭焼きの仕事のゴールは、炭を使ってくださる方が喜んでくださること、満足のいく時間を過ごしてくださること、だと思っています。
火鉢でお使いの方なら、火鉢で使いやすい炭をご提供して、ほんのりとした暖かさとゆったりとした時間を味わっていただくこと。
焼鳥屋さんなど飲食店の方でしたら、仕事がしやすい炭をご提供して、ご来店のお客様に喜んでいただくこと。
炭を焼くのが仕事ではない。料理を作ればコックさんの仕事は完了ーではなく、料理を食べたお客様が笑顔になることがコックさんのゴールであるように。

そのために炭切マニアとしては、張り切るわけです。
炭の出荷先はだいたい決まっているので、お客様のことを思い浮かべながら、あの方はこんな感じ、この方はこんな感じ、と切っていきます。
お客様の使い勝手が大切なので、毎回同じ感じの炭がお届けできるようサイズや質感に気を配ります。原木の状態は毎回違いますから、炭切の段階で調整するのです。

窯出しした炭は毎日の調理に使ってみて、火力や火持ちを確認し、炭切の参考にします。

炭焼きになりたてのころから数年間、わたしのこのやり方は諸先輩方からむちゃくちゃ怒られました。
しなくてもいい仕事をしているからです。
仕事を丁寧にしようがしまいが、卸値は変わりません。できるだけ手間を省いて手早く作業をすませたほうが金銭的には得なのです。当時の卸値はかなり安かったので、省エネ作業は現実的判断でした。
それはとてもよく理解できます。

でもなぜ諸先輩方の言うことを聞かなかったかと言うと、金銭だけを目的にした仕事はやっていてつまらないからです。飽きるのです。
それからお客様と顔の見える商売がしたかったということがあります。お客様のご要望に対して、ご提案ができるようにしておきたい。ご質問に対してもできるだけお答えできる炭焼きでありたい。

 

なんかこういうことって商売していくうえで当たり前のことだと思っていたけれど、村ではそうではなくて異端みたいなので、寂しいなあと。