satoyamahanako’s blog

里山で炭を焼いて暮らしています。

里山暮らし

出張床屋

Mさん(男性、80代後半、一人暮らし)が玄関先で髪を切ってもらっていた。若いころ中国を旅していたとき路上床屋をよく見かけたけど、日本ではMさんが初めてだ。前にも見かけたことがあるから、床屋さんは定期的に通ってきているのだと思う。 Mさんのお宅…

がんばりました。

今日、生まれて初めて一人で高速道路を運転しました。わたしは村に移住するために運転免許証を取得して、基本的に村の中でしか運転をしません。高速道路とかね、もうありえない、と思ってたんですけど、今日はどうしても一人で出かけなくてはいけなかったの…

池掘りからマンションへ

50年とか60年前はまだ土葬だった。土葬のための穴を掘ることを池掘りと言ったらしい。近所の人たちで池を掘るのだが、大きく掘るのは大変だから、その当時の棺桶は今みたいな長方形ではなく、文字通り桶の形をしていて、遺体を丸くして納めた。 余談だけ…

少女たちよ

うちから車で2分ほど上流に上ったところに毎年たくさん蛍が飛ぶ。それはそれはたくさん飛ぶので、川の両端の杉林はクリスマスツリーのようだ。暗闇に緑色の光がポヤーンポヤーンとそこここで点滅するさまは幻想的で、どこか違う世界に入り込んでしまった心…

わたしのチャレンジ

村で暮らし始めたころ、ある集まりに夫婦で参加した。公民館に到着したとき、広間にはすでに40人くらいの人が集まっていて、数名ずつの塊になっておしゃべりをしていた。さてどこに座ろうかなと立ったまま空いたスペースを探していたところ、「そろそろ始…

思えば遠くへ来たもんだ

朝、夫とコーヒーを飲んでいた。稜線のあたりが薄いレモンイエローに染まり始めていた。山村は日が昇るのが遅いのだ。「俺、こんなに幸せでいいのかなあと最近思うんだよ」と夫が言いだした。スズメの声が聞こえる。「空気も水もおいしい良い環境に住めてさ…

出かけたいなー

数か月前に都会から村に移住してきた人と話していたら、コロナの話題になった。「コロナに関して村の人のほうがまだ慎重ですね。都会だとコロナはもう普通の風邪に近づいてきたという感じがあって、気をつけるべきところはきちんと気をつけて、あとは通常の…

お地蔵さんみたい

うちの村への移住を決断した大きな理由のひとつは炭焼きがいたからだけど、炭焼きがいる村は他の地域にもある。それはわたしたちも知っていた。こういう場合、他の地域も訪ねてみてから決めたほうが後悔が少ないはずだ。なにしろこれから先の一生を過ごすこ…

マキは万年、カヤ限りなし

たとえば、「マキは万年、カヤ限りなし」(マキもカヤもすごく長持ちするという意味。弥生時代のカヤで作られた棺が発掘されたと本で読んだことがある。それくらい長持ちするらしい。古い家では土台や敷居に使われている)とか、栗の木は腐りにくいから柱に…

夏の終わりに

「こんなふうに虫の声を聞きながら死にたいな」と夕食を食べながら夫が言った。ヒグラシが盛んに鳴いていた。「病院だと、ピーッみたいな機械音を聞きながら死ななきゃいけないんだよ。嫌じゃん」ドラマなんかで見る「ご臨終です」と医者が家族に伝える場面…

僕らはみんな生きている

「虫が嫌いだから田舎暮らしはできない」という人がいる。わたしも虫は好きではない。なにが嫌かって、まずコミュニケーションが取れないところ。こうしてパソコンに向かっていると突然、腕にガシャガシャした感触がある。ナナフシ!なんでわたしの腕にしが…

狸のおっちゃん

朝早く、まだ車通りも少ない時分、通りを歩いていると向こうから狸が歩いてきた。それがちょうど夜勤明けでいっぱいひっかけたおっちゃんが歩いてくるみたいな感じだったのだ。心地よい疲れを感じながら、鼻歌でも歌っているような様子で、あっち見こっち見…

キツネの王様

朝、家の前の通りに出たら、やけにカラスがうるさい。5~6羽がかたまって喧嘩腰に騒いでいる。いつものようにトンビとやりあってるのかな、今朝は早くから始めたもんだなと思ったら、そうではなかった。キツネだった。山中の集落へ入る道の上り口にキツネ…

狭い世界と広い世界

山に囲まれた村で暮らし、月に数回のホームセンターでの買い出し以外にはほとんど村から出ることはない。近所の高齢者と半径2~3メートルの話題(噂話とも言う)について言葉を交わすこともあるけれど、基本的には夫以外の人とはあんまり話さない。日々黙…

高齢者一人暮らし

うちの猫がご近所のお宅にご迷惑をおかけしたことがあって、謝罪に行った。Aさんは堪忍袋の緒が切れたという口ぶり、Bさんはご近所なんだしお互い様、わたしももっと年取ったらお世話になることがあるんだからと明るかった。この物言いの温度差は2人の境遇…

高齢者ばかりの山村

仕事をしていたらMさんが通りを歩いているのを見かけたので挨拶の声をかけた。 Mさんはおそらく80歳を過ぎていて一人暮らし、耳が遠く、足元もおぼつかない。 手押しカートの取手を両手でしっかりつかみ、ペッタンペッタン、ペンギンみたいに歩く。ペンギ…